うちの実家では以前、玄関の鍵を外に隠して置いてました。駐車場のところに、ガラス瓶の中にいれて。あんな場所に置いてると泥棒がすぐにみつけるよ、と注意してもそのままでした。
今年の春、両親が実家を離れた後、兄はすぐに鍵を撤去しました。昼間は仕事で誰もいないので、それこそ空き巣に入られたら大変ですから。
再現してみた……こんな感じ、これはうちの家。
これに布を押し込み見えないようにしてた。
兄のところの、甥っ子のエム君が年末に帰省してきます。母は、エム君が家に入れないかもしれないとずっと心配をしています。
「鍵をあの場所に置いてないから」ですって。
母は鍵を置いてないことが気に食わないのです。
「エム君は家に入れるだろうか、
いつもの場所に鍵は置いてるだろうか?」
鍵はもう置いてない。
兄が実家に住んでいる。
携帯で連絡がとれる。
心配はいらない、と説明しました。そのわずか10秒後、また同じことを
「エム君は家に入れるだろうか、
いつもの場所に鍵は置いてるだろうか?」
私はまた更にいろいろと解説。その10秒後、また……
「エム君は家に………」
これを、5〜6回繰り返したんです。
ヤバい……母ぶっ壊れた?
ーぶっ壊れてはない、これ以外はいたって普通です。
母の脳内には、鍵がなく家に入れない、困った姿のエム君がいるんでしょう。
家に電話がなかった時代ならまだしも、今は携帯ですぐに連絡が取れます。
ひょっとして、母の感覚は、その時代に戻ってるのかもしれません。
年末からお正月にかけては、どうしても実家の話題になります。母が連日、心配ごとをグズグズ言うのは、仕方ないかもしれません。
普段は静かな母ですが、実家に関することは、強いこだわりを見せます。主に本人の持ち物なんですけど、もうね、凄まじい執念ですよ。
あんなに持ってた洋服は、どうしてこんなに少ないのか。
(母と私で処分)
編んだセーターは、何故一枚しか残ってないのか。
(母と私で処分)
使ってた本人の布団(カビが生え処分)
剪定ハサミ(錆びだらけの古い物)を取りに行きたい、あなたにあげる。
・・などなど
今現在、母が私の家で落ち着いて過ごせるのは、場所を変えて生活をしているからだと気が付きました。何もかも新しいことなので、私の言う通りにするしかないのです。
もしもこれが、私の方が実家に移り住んでの同居だったら、今のように穏やかではなかったと思います。きっと、毎日のように揉めてましたよ。
そう考えると、兄は本当によく頑張ったと思います。
ガスを何度も消し忘れる母に、台所仕事をやめさせたときは、ずっと揉めたみたいです。その他にも色々……
これまでのやり方に固執する母と、常に言い争っていたようです。
そんな母にほとほと疲れて、兄は一年前の今頃、もう壊れかけてました。
高齢の親と一緒に過ごすのは、つくづく忍耐が必要です。相手をコントロールする工夫もいります。鍵のことだって、「やっぱりまた置くことにしたよ」とでも言っておけば、大人しくなるんでしょうね。時にはゴマカシや嘘も必要です。
さあ、今年もあと3日。鼻歌でも歌いながら、大掃除して、お花はこれから買いに行って、作りたくない料理だって……きっと作るよ。
そんな私の、いつもの年末。