以前父に尋ねたことがあります。祖母の遺産相続はどんな風にした?と。
祖母は一人暮らしが出来なくなった頃に横浜からやってきて、3年間うちで暮らしました。
「家を売却した代金と預貯金を、電話で兄弟に伝え、このように分けたいと提案して決まった」
「特に揉めることもなかった」
らしい。
そんな遺産相続の話になると、浮かない顔になるのが母でした。母は、自分の親の遺産相続を何も知らないままです。
母の父親すなわち母方の祖父は、母が2歳の頃に亡くなり、遺産のすべてを母の長兄が相続したそうです。
祖母は何も相続しなかった・・・妻が何ももらわないなんて、そんな時代だったんですね。
祖父は町のあちこちに土地や借家を持っていて、祖父亡きあとでも、その賃貸収入でそれほど不自由することなく生活できたと聞いてました。炭鉱で潤ってた時代の話です。
戦前の相続だから、長男が一切を相続するのはよくある話だと思います。
40代で未亡人になった祖母は、90歳で亡くなりました。昭和60年頃。祖母が亡くなった後、長兄から相続の話がないと母は困惑してました。蚊帳の外というか、知らん顔をされたようなんです。
祖母に預金が何もないのなら、分ける財産は何もないと言えばいいし、祖母と同居していた長兄がもらうでもいいですよね。
祖母は国民年金を受給していて、銀行の通帳くらいは持ってたはずです。何もお金が欲しいとか言ってるのではない、どう分けるかなんてのも、長兄の意見が尊重されるのがいい。
問題は、母たち兄弟に何も教えないことです。法定相続人なのに……
母にどうなってるかを聞けば?と言っても「聞けない・・」と言ってました。えらく遠慮するんですよね。傍から見ていて不思議でした。
そんな母を見ていたから、相続で大事なのは「遺産を開示すること」だと思ってました。
遺産を開示?って、ちょっと大げさな言い方ですけど、難しいことはない。
「不動産の内容、預金の金額」を
「法定相続人」に
「言う」
これだけですよ。
夫の母が亡くなった時は、不動産、預貯金を列記した書類を作成し、3人の義姉に送付しました。
○○銀行 ○○○○円
ゆうちょ銀行 ○○○○円 とかね。
そこから、入院費、葬儀の費用等を除いたものを相続人で分けました。
相続はスムーズでした。
さて先日、母の口座に保険金が入金されてると兄から連絡がありました。子のない一番上の姉からの保険金です。
うちの母は、85歳にして初めて遺産なるものを相続しました。請求する書類も自署だから、本人が頑張って書きました。私の手助けは沢山ありましたけど。
これが、
「母の初めての相続のお手続き」となり、姉ちゃんアリガトって呟いてました。
ついでに書きますが、うちでは両親のお金は兄が会計担当です。父の老人ホームへは兄がお金を振り込んでいます。母にかかる費用は、私が兄に請求し振り込んでもらいます。母の銀行口座は兄が管理し、ウェブ上で私もログインして見れます。試しに一度ログインしたけど、それからは見てないです。
兄は仕事柄、たくさんの人が相続で揉めるのを見てきたから、揉めたくないと言ってました。だから自然にこんな形になりました。
預金残高まで常時見れるようにしてるのは、珍しいかも。ガラス張りですね。
自分の親の預金があったかすらもわからぬままの母、
一方、リアルタイムで母親の預金を確認できる私。
雲泥の差ですね、時代の差なのか。