薬指のブログ

日々おこる出来事や想いを綴ります

延命を知りたくて読んだ本、「穏やかな死に医療はいらない」萬田緑平 著

以前のブログで書いた通り、「両親の延命治療はしない」のが私たちの意向です。では延命治療について詳しいかというと、そうではありません。

もっと知っておきたいと思い、延命治療について書かれた書籍を探しました。レビューが良く、多くの人に読まれているのを図書館で借り読みました。

それがこちら
「穏やかな死に医療はいらない」 萬田緑平 著

この本は、現在「緩和ケア萬田診療所」でがん患者専門の在宅緩和ケアを行っている、医師の萬田緑平さんの書かれた本です。

冒頭の「はじめに」で、萬田さんが大学病院の外科医から、在宅緩和ケア医に転身した理由が書かれていました。読みはじめわずか1分で、引き込まれてしまいました。

「第1章 上手に枯れて穏やかに死ぬ」のうち、すべての治療は延命治療ー胃ろう、点滴、抗がん剤……は、医師の経験からの貴重な話だと思います。

知りたかったことのうち、印象に残った内容を少し書き出してみます。

●胃ろうのこと

胃ろうはすぐれた技術で、本来は手術や治療で一時的に食べられなくなった患者さんのものだった。回復すれば、チューブを抜いていた。
ところが2000年頃から、ものを食べたり飲んだりする力が低下したお年寄りの延命の技術として使われるようになった。近年問題にされてるのは、回復の見込めない寝たきりの認知症や老衰一歩手前の患者への造設。

●なぜ胃ろうがお年寄りに広まったか
原因は様々だが、一つには病院の事情がある。1990年代後半の診療報酬の改定で、長期入院患者の診療報酬が引き下げられ、緊急・重症を脱した患者には退院を促すことになる。退院後は療養型病院・介護施設へ行くことになり、施設の受け入れ条件に「胃ろうを入れること」と条件があることが多い。食事を「安全に管理」するならば、チューブで栄養を流し込むだけの胃ろうがずっと効率的だから。

お年寄りの胃ろうは、家族・病院・施設の都合で、当人の意思とは全く関係のないところで造られている。

―――胃ろうは、このような経緯で多くのお年寄りに造られてきたのですね。

 

この本はタイトル通り、がん患者が在宅で穏やかな死を迎える様子が描かれています。いくつもエピソードが出てきて興味深く読めます。

今のところ健康な私も、いつ病気になるかわかりません。延命治療をもっと知りたくて読んだ本ですが、それだけでなく、少しずつ終末に向かう私たちが命を失うのは、生命体として至極当たり前のこと、と改めて思うことができました。
素晴らしい本だと思います。