薬指のブログ

日々おこる出来事や想いを綴ります

鹿児島の温泉郷に、もう一度いきたい

今週のお題「好きな街」

転勤族だったので色んな土地に住んだことがあります。人口の多い政令都市や、田舎の郡部もあります。その中でも印象に残っているのが、20代の若い頃住んだ鹿児島県の田舎街です。

市町村の合併で現在は霧島市となっているその街は、温泉郷として有名なところです。桜島の火山灰があまり降らない地域だと聞き、私たちはその街に住むことを決めました。昭和が終わり平成になるころでした。

最初は「ここは田舎すぎる」というのが正直な感想でした。川沿いに旅館や風呂屋が立ち並び、その周辺には田や畑が一面に広がっていました。でも住んでみると、スーパー、銀行、郵便局、病院など生活に必要な施設が徒歩圏内にあり、生活するのには何も困らず便利なところでした。

南国のそこに住み驚いたことは、夏になると夕方のニュースでアナウンサーが、

「明日は暑さが厳しいので、子どもさんは外で遊ぶのはやめましょう」

と注意報のように言っていることでした。暑さの厳しい地方は、ニュースでそんなことをいうのかとビックリした覚えがあります。私の生まれた福岡県では聞いたことがありませんでした。今でこそ大気の温度が昔よりあがり、夏の間は猛暑の注意喚起がされますが、暑さの厳しい土地では昔からそのような声掛けがあったのです。

それと地元の方によく質問されたのが、

「うちぶろはありますか?」です。あなたの家にお風呂はありますかという質問です。

湯治場としても知られるその地区では、家のお風呂にはあまり入らず、家族湯に入りにいくようでした。そしてしきりに「家族湯におはいり」と勧められました。もちろん、よく家族湯は行きました。家のお風呂よりひと回りもふた回りも大きなお風呂があり、貸し切り500円だったと思います。温泉の湯でお肌がすべすべになって気持ちよかったです。

桜島

そこでは初めての子どもが生まれ、子育てが始まりました。人口の少ないその街では、日中、ベビーカーを押してスーパーへ着くまでの道のりで、誰ともすれ違わないことを経験しました。暑さを避け開店と同時にスーパー行ったときには、お客さんが誰もいませんでした。公園に行っても誰もいない、銀行は人がまばら。小さな赤ちゃんの世話に追われながら、世の中の人は一体どこに行ってしまったのかと思いながらの毎日でした。

夜になると夫が仕事から帰ってはくるものの、果てしなく続く赤ん坊と二人っきりの単調な日々。こんなに孤独を感じるなんて、想像すらしていませんでした。親や親戚や友人からも、誰からも語られたことのない話です。この地は「子育ては孤独なのだ」と私が気が付いた場所でもあります。

2年くらいで転勤になり、それからは転勤族の多い地域に努めて住むようにしました。同じような境遇の人と協力し合って、子どもとも親とも仲良くしました。親に頼れないよそ者同士で不思議とすぐ仲良くなれました。

 

かつて私の住んだ温泉郷は、緑豊かな環境の良いところで、人もみな私たちに優しくしてくれた。でも、子育ては孤立するという現実を知った場所でもある。

思いもかけない感情を経験したせいか、懐かしんで訪問したいと思うことはありませんでした。ですが最近「もう一度あの場所に立ちたい」と思うようになっています。三十数年の時を経て、私の中で何かが変わったのでしょうか。いつか行くことが叶った日には、ブログで温泉郷のその街を紹介したいと思っています。霧島市の日当山(ひなたやま)温泉です。