薬指のブログ

日々おこる出来事や想いを綴ります

父の運転免許返納

今週の火曜日19日、夕方のニュースを見ていると、松永拓也さんがテレビに映りました。2019年4月19日に起きた池袋自動車暴走事故の被害者の遺族の方です。あの日から3年が立ちました。この日が事故の日で、慰霊碑を訪れているという内容でした。松永さんはどんなに辛く悲しいことでしょう。私にはひたすら手を合わせ祈ることしかできません。

乗用車を運転していた事故の加害者が、当時87歳の高齢の「イイヅカという人」だと書くと、あの事故だと思い出す方も多いのではないでしょうか。私は事故後の彼の言動に腹立たしいものを感じた一人です。

テレビで拝見した松永さんの姿が数日たっても脳裏をよぎるので、大変だった父の免許返納のことを書きます。身内の恥をさらすようでためらいますが、どなたかが参考にして下さると幸いです。

♢ ♢ ♢

2019年の話です。1930年1月生まれの父は、89歳になってもまだ車を運転していました。マニュアル車。これまでも運転をやめるよう再三家族で話をしてきました。本人の答えは、

「まだ出来る」「ないと買い物や病院に行けない」

ヒートアップしてくると、「俺の生きがいをとるのか」と怒り出す始末でした。

こんな年齢まで父親の運転を野放しにしている私たち家族は明らかに非常識です。2019年が明けた時、私は今年中に車を廃車にしようと決意していました。乗っていた軽乗用車が11年目を迎えていましたし、乗る車を本人の前からなくしてしまうのが一番だと思ったからです。

それからは月に一回くらいのペースで出向き、話し合いを繰り返しました。話を聞くうち、任意保険の加入を、来期は保険会社から断られていることが判明しました。原因はスーパーの駐車場で接触事故を起こしたからだと母が教えてくれました。任意保険が加入できない状態での車の運転など到底認めることが出来ないので、それを理由に運転をやめるよう強く迫りました。

父は定期的に受けている「認知症テスト」で合格だったとか、
「今まで長い期間無事故無違反だったので、事故を起こすことなんてない」と言い張りました。どうやら直近の接触事故は頭の中にはないようでした。そして極め付きは、

「俺に限ってそういうことはないと思う」でした。

この思考は老人特有でしょうか。それとも元々そういう人格だったのか。その自信がどこからくるのか不思議でなりません。車の運転は、気をつけていたとしても起きることです。それは誰にでも起きます。運転する以上、いつ何が起きてもおかしくないのに、「俺には起きないと思う」と繰り返すのでした。

そう言ったやり取りをしていた時に起きたのが「イイヅカという人」の事故です。あの痛ましい事故の他、頻繁に報道される高齢者の事故をあげていくと、話し合いの終盤には運転をやめることを渋々受け入れざるを得ない様子でした。今からすぐというと強く反発したので猶予期間を設けました。期限は任意保険の終了する2019年12月8日までとしました。

私は実家のことを書く「実家ノート」をつけています。廃車日を決めるというその日は、強い気持ちで挑んだ訪問でした。行く前、私はノートに「話し合って今日決めること」を箇条書きにしました。季節は秋になっていました。

11/2 話し合うこと
①車の廃車について いつ 誰がどのように 費用
②母のシルバーカー購入・・・
③スイミングはどうするか・・・
④自転車の購入は、サイクル保険は・・・

この日に、車の廃車は「12/1、日産ディーラーの担当者が取りに来てくれ、料金はかからない」とすんなり決まりました。その後の12/1日曜日、仕事が休みの私も立ち合い、車が去っていく様子を見守りました。すぐさま兄や娘達に報告しました。

この数年間はいつも心に引っかかるものがあり、テレビで高齢者の事故のニュースが流れる度に胸がドキドキしていました。報道があると、うちの親だったらどうしようと真っ先に地域を確認する自分がいました。

これでよそ様に迷惑をかけなくてすむと思うと、体の力が抜けていくようでした。

♢ ♢ ♢

免許返納に地域差など事情がありますが、歳をとったら一律に免許返納と言うのは難しい話でしょうか。

高齢になると明らかに判断力、視力、聴力、色の色別、物忘れなど随分と衰えます。ですが高齢者は自分の老いの自覚がありません。家にいて行動も狭くなり、能力の衰えを自覚する機会が少ないからだと思います。もちろん衰えには個人差がありますが、次第に出来ないことが増えていく高齢者に、車の運転の制限をかけないのはおかしいと思います。

運転免許は自ら返納される方もいれば、いつまでも運転しようとする人もいる、それが現実です。運転しようとする彼らをやめるよう説得するのは、至難の業です。対策としては、運転の引退年齢を決めるのもありだと思います。今後是非そうなって欲しいと思います。