薬指のブログ

日々おこる出来事や想いを綴ります

不仲の両親に孫が教えたこと

私は幼少期から、両親の夫婦喧嘩を見ながら暮らしていました。日々繰り広げられる母から父への小言。元々無口で口下手な父親は、最初は黙って聞いているのですが、止まらない母からの容赦のない攻撃に、怒りをあらわにすることが度々ありました。時には皿が飛び、時にはつかみあい、2人はいざこざを繰り返すのでした。小学生くらいまでは、泣きながら止めに入っていました。それ以降は、家の中の険悪な空気の中、まるで何事もないかのように自分のやるべきことを優先しながら学生生活を送りました。毎日繰り広げられる夫婦喧嘩を横目で見ながら、両親とは必要最低限の会話しかしないという、批判的ともいえる冷ややかな態度をとりながら成人しました。

思いのほか早くにその生活は終わることになります。私の結婚です。結婚願望はまだなかったのですが、恋人の結婚したい願望に押し切られる形で結婚し、家を出ることになりました。23歳でした。それから私は、夫の転勤のため引越しを何度もしながら、子供を2人生みました。その度に両親から沢山助けてもらいました。

人生の重大なことがある度に、私と親との関係、そして夫婦の関係も変化していきました。両親にとって孫の存在はとても大きかったようです。特に父は、孫達から絶大な人気を誇っていました。いつまでも一緒に遊んでくれる少年のようなおじいさんは、孫4人の人気者でした。

とりわけ、うちの長女がおじいさんと相性が良く、気が小さい長女のよき理解者、よい遊び相手でした。小学生のころから長女は頻繁に、おじいさんの良いところやすごいと思うところを私たちに披露しました。

「私と同じでネガティブだけど、すごく真面目、きちんとしてる、やさしい。あんな優しい人でいいな。おじいちゃんみたいな人と結婚したい!」と真顔でうちの母親に言うのです。母親はまんざらでもない様子でいつも笑いながら聞いていました。

現在父は91歳、母は83歳。

私が家を出て、父と母2人だけの生活になって30年以上たちます。母が腰が悪いほかは、2人とも大きな病気をすることもなく、元気で暮らしています。最近の母の言動は、以前からは想像もつかないものになってきました。10数年前からです。父のことを私たちに自慢するようになったのです。

他のおじいさんと比べ、背筋はピンと伸びかっこうが良い
外回りの掃除を毎日し、キレイを保つ
毎日規則正しい生活をする
身の回りの整理整頓を欠かさない 
長生きしてるので、年金がはいる など

電話で近況を尋ねると、二言目にはおじいさん自慢が始まります。母が父の良いところを見るようになったのです。そうなったのは、他ならぬ、長女のおじいさんを慕う気持ちだったと感じます。彼女の言葉で、母は気が付くことができたのだと思います。あんなに父のことを悪く言っていたのに、母は以前ほど文句を言わなくなりました。夫婦喧嘩ばかりの日々が嘘のようです。

人は変わることができる。そして夫婦、家族の関係も、月日と共に変わっていくものだと思います。